英語を話す子の共通点
子どもが“自分の言葉”として英語を話し出す瞬間
「うちの子、いつ英語を話し始めるんだろう?」
英語教育に関わる保護者の方なら、誰もが一度は思う疑問かもしれません。実は、英語で自然な発話が出てくるには「インプット3,000時間が必要」と言われることがあります。これは確かに理にかなっていて、言葉はまず“耳にたくさん入ること”から始まるという前提です。
でも私は、英語教室の現場と家庭での英語子育て、両方の視点から、少し違う実感を持っています。
「話したくなる空気があれば、たった数時間でも、英語は口から出てくる」
これは長年、数多くの子どもたちと過ごしてきた中で得た、確かな感覚です。もちろん、インプットは大切です。耳が慣れ、音に対する抵抗感がなくなるまでには時間がかかります。ただ、“話す”というアウトプットにおいては、量よりも“質”や“動機”が大きな鍵になるのです。
生理的欲求や感情から出る“本物の英語”
子どもが英語を自発的に話すきっかけは、必ずしもレッスンの中だけにあるわけではありません。むしろ、何気ない日常の中でふと感じる“言いたい!”という気持ちが、発話につながる大きなチャンスになります。
たとえばこんな言葉から始まります。
“I want to go to the toilet.”
“I’m thirsty.”
“I want that!”
“May I have two candies?”
“I did it!”
これらはすべて、生理的な欲求や自己承認欲求から出てくるフレーズです。「トイレに行きたい」「喉が渇いた」「これが欲しい」「できたから見てほしい」——こういった感情や欲求は、子どもにとって“いますぐ伝えたい”気持ちであり、そこに語学的な壁はほとんどありません。
だからこそ、こういった瞬間は、英語を“勉強”としてではなく“伝えるためのツール”として使い始める最初のステップになるのです。
長時間のインプットよりも、“使いたくなる環境”の力
おうち英語を実践していると、「自然に英語が出てくる」場面にたくさん出会います。これは家庭で英語をたくさん使っているから、というよりも、一緒に過ごす時間が長いことで、英語で表現する“タイミング”が自然に生まれやすいからです。
たとえば、トイレに行きたい、お水が飲みたい、もっと遊びたい。そんな日常の中の“言いたい”が、英語での発話のきっかけになります。
もちろん、すべてのおうちで英語を取り入れているわけではありません。でも、英語を“使いたくなる環境”を一時的にでも作ることで、数時間の関わりでも、子どもは驚くほど英語を話し始めるということも、私は何度も見てきました。
特にサマースクールなどの短期プログラムでは、そういった“話したくなる空気”を意識的に作っています。英語を強制するのではなく、「言いたくなる」「伝えたくなる」瞬間をたくさん用意することで、自然な発話が促されるのです。
発話につながる「使いたくなる」英語フレーズ 50
以下は、実際にレッスンや日常の中で子どもたちが自然に使うようになったフレーズの一部です。どれも“感情”や“欲求”が先にあるからこそ、発話につながりやすいのです。
I want to go to the toilet.(トイレに行きたい)
I’m thirsty.(のどがかわいた)
I’m hungry.(おなかがすいた)
I’m tired.(つかれた)
I’m sleepy.(ねむい)
I’m hot.(あつい)
I’m cold.(さむい)
I want that.(あれがほしい)
I don’t like this.(これ、すきじゃない)
I like it!(これ、すき!)
I love this.(これ、大好き!)
I don’t want to.(やりたくない)
I want to play.(あそびたい)
I want to try.(やってみたい)
Can I try?(やってみてもいい?)
Can I do it?(ぼくがやってもいい?)
Can I play with this?(これであそんでもいい?)
Can I go outside?(そとに行ってもいい?)
Can I help?(てつだってもいい?)
Can I have more?(もっとちょうだい)
May I have some water?(お水をもらえますか?)
May I have two candies?(あめを2こもらえますか?)
May I go to the toilet?(トイレに行ってもいいですか?)
I did it!(できた!)
Look at me!(ぼくを見て!)
Watch this!(これ見て!)
Look!(見て!)
Come here!(こっちきて!)
Let’s play!(あそぼう!)
Let’s do it again!(もういちどやろう!)
It’s fun!(たのしい!)
This is hard.(これ、むずかしい)
I can’t do it.(できないよ)
I need help.(たすけてほしい)
I’m done.(できたよ/終わった)
I’m finished.(終わりました)
I made it!(つくれた!)
It’s mine!(それ、ぼくの!)
That’s not fair.(ずるい!)
I’m scared.(こわい)
I’m happy.(うれしい)
I’m sad.(かなしい)
I’m angry.(おこってる)
I’m excited!(わくわくする!)
I like this game.(このゲームすき)
I don’t want to stop.(やめたくない)
Just a minute!(ちょっとまって!)
Wait!(まって!)
Again, please!(もういちどおねがい)
One more time!(もういっかい!)
これらのフレーズは、どれも“伝えたい気持ち”が先にあるからこそ、意味のある言葉として口から出てくるのです。
おわりに
子どもたちは、与えられた英語を機械的に覚えるよりも、「言いたい!」という気持ちが高まったときに、驚くほどスムーズに言葉を使い始めます。
そのきっかけは、“発音”でも“単語数”でもありません。伝えたい気持ち × それを受け止める空気感。
私たちは、英語を話すことをゴールにしていません。その先にある「英語で気持ちを伝えられる自分」になることが、本当の意味でのゴールだと思っています。
だからこそ、レッスンの時間だけでなく、何気ない休憩中や遊びのひとときにこそ、英語が“自分の言葉”として芽生える瞬間を大切に育てていきたい。
英語が「できる」ではなく、「使える」ものになる——その第一歩としての発話。
このブログが、どこかで同じような悩みや疑問を抱えている方のヒントや安心につながれば嬉しいです。
- カテゴリー
- レッスンの内容